GX基本方針ならびに原子力政策に対する意見を提出しました
2023年1月25日更新
山梨県生活協同組合連合会
会長 志村 宏司
生活協同組合は、消費者が共通の願いを実現するために協同して運営する組織です。「持続可能な社会の実現」を掲げ、地域や地球環境の持続可能性を大切にした事業と活動を推進しています 。特に消費者のくらしに密接なエネルギー問題については強い関心をもち、再生可能エネルギーが中心の、原子力発電に頼らない社会の実現を求めてきました。
パリ協定において定められた1.5℃目標を達成するためには、2030年までの2020年代の10年が決定的に重要であると言われています。脱炭素に向けた施策はこの期限を意識して検討されるべきです。一方で、エネルギー問題への対応は、今を生きる私たちのみならず、将来世代にも大きな 影響を及ぼします。当然、何十年も後の人たちに負担を生じさせる方針であってはなりません。
今回の政府方針が未来に生きる世代を意識し、かつ2030年までの排出削減につながる内容となることを期待し下記の通り見直しを求めます。
1.今回の報告書に示された原子力発電の積極活用を図る方針は、従来の政府方針を転換するものであり、エネルギー
基本計画の内容とも整合しません。広く国民が議論に参加できる機会を保障し、国民的な合意の上で原子力利用の
方向性を確認すべきです。
今回の方針は、既設原子力発電所の運転期間の延長、次世代革新炉の開発・建設など原発の積極活用を図るものとなっています。
政府は2011年の東日本大震災における福島原子力発電所事故以来、原発の新増設や建て替えには言及していませんでした。エネルギー基本計画でも「再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する」と記載しており、原発の積極活用を図る今回の方針は従来政策の転換と言えます。
問題なのは、今回の方針転換が、GX実行会議を中心に限られたメンバーによって、4か月という短い期間で策定されたということです。東日本全体が壊滅する可能性すらあった大惨事を経験した日本において、原発は国民全体の重要な関心事です。原発に関する政策については、丁寧に情報を開示し、広く国民が参加できる機会を保障したうえで、国民全体の合意を持って決定されるべきです。
2.気候危機回避には2030年までの排出削減が重要であり、原子力や火力発電に依存せず、生可能エネルギーの主力電
源化を脱炭素社会に向けた主軸に据えるべきです。
気候危機のリスクを低減するためには、2030年までの温室効果ガスの排出削減が決定的に重要だとされています。
今回の方針では、脱炭素社会の実現に向けて、火力発電所における水素・アンモニアの混焼や次世代革新炉の開発・建設が掲げられていますが、両者ともに2030年という期限には間に合いません。コストと人材は限られていることから、原発や火力発電に固執せず、再生可能エネルギーの主力電源化を脱炭素策の主軸に据えるべきです。
あわせて、第6次エネルギー基本計画で36~38%とされている再生可能エネルギーの電源構成を、国際水準である50%まで高めることを求めます。
3.安全性への懸念から原発の運転期間の延長は実施すべきではありません。
もともと原発は30年ないし40年を設計寿命として建設されています。福島第一原子力発電所の事故後に40年以上の運転を原則として認めない運用にしたことは、技術的事実をふまえた上で、原発依存を低下させるという政策的判断を法制化したものです。
このため、停止期間を含めて60年を超える運転期間を可能とすることは、リスクを高め、老朽化対策などのコストも増大することとなることから見直しを求めます。
4.2030年までの排出削減につながらず、リスクとコスト負担を生じさせる次世代革新炉の新設に取り組むべきでは
ありません。
次世代革新炉の新設には計画から少なくとも10年から20年かかり、その間の電力供給やCO2排出削減について何ら貢献することはありません。また、一旦稼働すれば、少なくとも40年の稼働が固定化し、その間のエネルギー政策を縛り続けることで再生可能エネルギー導入の足かせとなる恐れがあるほか、放射性廃棄物の処分や廃炉などで将来世代にリスクとコストを負担させることになりかねません。次世代革新炉の新設は見送り、原発に頼らない政策に転換すべきです。
以上